大学生なら考えたい“休学制度の利用”
海外には、入試から入学までの期間をあえて長く設定し、一般的な大学生活では得られない経験を積むギャップイヤー制度を推奨する大学が増えています。かつて日本では、大学を1年間休学し、5年間かけて卒業することがかつては「リスク」と捉えられていた時代もありました。しかし、近年では、ギャップイヤー制度への関心が高まり、大学生活の前後・修学期間中に1年間程度大学を離れて自分の将来の方向性や価値観を高める「休学」に対する評価が大きく変わりつつあります。
また、コロナ禍の影響で、多くの学生が大学生活で思い描いていた活動に十分に取り組むことができず、特に留学やインターンシップなどの貴重な経験が制限されてしまいました。このような中で、大学を休学し、留学や海外インターンシップに挑戦することで、他の学生との差をつける経験を積むことができます。
そのため、「自分の将来の方向性や価値観を高めることを目的」とした活動として、夏季休暇や春季休暇を利用して渡航する短期留学では得られない経験を求めて、約1年間腰を据えて留学に挑戦する大学生は増加しています。これは、将来の就職活動においても大きな意味を持ちます。
-大学生活の集大成となる就職活動に備える
就職活動の選考で有利になる要素とは何でしょうか?
実は、就職活動をスムーズに進められるかどうかは、就活前にすでに決まっていると考えられています。それは、就職活動で問われることが「社会で活躍する準備ができているか」「他の応募者と比べて相対的に魅力があるか」「職種に合わせた適性を満たしているか」の3点に絞られているからです。これらの評価ポイントは一朝一夕で身につけられるものではなく、大学生活を通じて、就職活動が始まる前に備えておかなければなりません。
また、日本の新卒採用では、一部の職種や企業において新卒採用枠のみが提供されており、新卒採用で最大の成果を出すことはその後のキャリアにおいて極めて重要です。
そのため、4年間の一般的な大学生活を送るだけでなく、海外で英語や異文化を学び、ビジネス経験を積む海外インターンシップ・プログラムに挑戦することで、その後の長い人生において大きな違いを生むことができます。海外インターンシップを経験している学生は、まだ多くはありません。他の就活生との差別化もでき、就職に有利に働く可能性が高まります。
実際、文部科学省の2023年度調査によると、「留学」を理由に休学する学生が経済的事情を除いて最も多くなり、休学を通じて新卒の立場を保持しつつ、自己成長や将来に向けた経験を積む学生が増えていることが分かっています。このような選択が、就職活動やその後のキャリアにおいて有利に働くことは間違いありません。
「早めの行動」こそ、休学留学のリスクを軽減させるカギ
大学を1年間休学することのリスクとして捉えられるのは、卒業までに通常の4年間+1年間の時間を要することと、大学によっては休学時にも学費が発生する可能性がある点です。時間に関しては、ギャップイヤー制度への注目が高まる昨今、休学した時間を有意義に活用できれば、決してリスクにはなりません。しかし、休学に伴う費用は、留学にかかる費用と合わせて事前に準備する必要があります。近年、国立大学では休学費用を課さない傾向にありますが、一部の私立大学では高額な休学費用がかかることがあるため、休学を決める前に確認しておくことが大切です。
また、休学するタイミングも重要です。大学3年生からはゼミや研究室の所属が決まり、日本の企業のインターンシップの応募が始まるなど、就職活動に向けた準備が本格化します。特に、近年は就職活動が早期化しており、大学3年生の時点から選考が始まる企業も増えています。4年生を休学することが遅すぎるわけではありませんが、3年生以前に休学留学をする方が学事スケジュールとぶつからず、スムーズに休学申請を行える可能性が高くなります。
休学留学においては、“早めの行動”が将来の可能性を狭めず、リスクも低減させることができる唯一の処方箋となります。
休学留学でインターンシップ留学を決めた理由とは?
大学3年を休学している楠木 理子さんの例
学年:大学3年生
参加プログラム:ビジネスインターンシッププログラム
滞在都市:シドニー・オーストラリア
滞在期間:2016年4月〜2017年1月
私が休学しインターンシップ留学を決めた理由は、大学在学中に沢山の留学生や留学経験者に出会い刺激を受け、海外に関心や興味を持ち私も留学を経験してみたいと思ったからです。交換留学という選択もありましたが、私があえて休学を選んだ理由は、周りの人たちが経験した留学と自分の留学を差別化し、より価値のある留学、今後に必ず役立ちためになる、自分が成長できるオリジナルの留学をしたかったからです。
有難いことに、留学環境の整っている私の大学では、休学するための費用はとても安いので休学のリスクは低く、またリスクを気にすることなく休学をすることが出来ました。また、学年が上がるにつれてゼミや専門でも学ぶことが多くなる中で、二年生終了後の休学は、経験してみてベストタイミングであったと改めて思うことが出来ました。
その理由は、ある程度大学で専門的な知識を学べたこと、その専門的な知識を生かしてインターンで実践することができたこと、将来やりたいことが自分に合っているのかを確認できたこと、帰国後就活が始まるまでの間自分に足りないものやさらに学びたいことを勉強し就活に向けて準備することが出来るなど、数多くのプラスになることがあったからです。
私は仕事を実際に経験してみて、新たにやってみたい仕事が見つかりました。この仕事は、インターンシップの経験なしでは見つけられなかったと思います。また、インターンシップを経験しないで自分の最初のやりたかった仕事を選んで就職していたらきっと、理想の仕事とのミスマッチが起きてしまったのではないかと感じます。たった一年の留学ですが、休学でインターンシップ留学を経験したことで海外生活の経験や自己成長しただけでなく、長所や短所を再確認できました。また、改めて自分を知ることで今後の将来が定まり、明確なものになりました。迷うことなく、やりたいことをやりたいと思った時に有言実行したことでこの留学が私の中で人生のターニングポイントになりました。

