『インターンシップ』とは、1900年初頭にアメリカで発案された特定の職務経験を就業前に積むための就業体験システムで、日本でも現在幅広いジャンルの企業が大学生・就活生をターゲットに意欲的に実施しています。一般的にインターンシップに参加する目的としては、
①実務を経験することで企業・業界に対する理解を深められる。
②企業内に人脈を作ることができ、選考前に自分を売り込むことができる。
③現時点での自分の知識や能力がどの程度通用し、反対に社会人になるために自分に足りないものは何かを見極めることができる。
などが挙げられます。しかし、世間で“インターンシップに参加しておけば就活で有利”、“インターンシップに参加すればその企業から内定が取りやすい”と言われているほど、インターンシップは甘くありません。それどころか必ずしも企業側が“大学生・就活生に就業体験してもらうための場”として親切にインターンシップを実施しているとは限らないのです。学生側がインターンシップに参加する目的や利点を挙げているのと同様に、企業側にもインターンシップを実施することに狙いがあり、必ずしもそれらが学生側が考えるものと一致するとは限りません。
今回お話しさせて頂くことのテーマは『業界別 国内インターンシップの真の趣旨』です。
(海外インターンシップは日本でのインターンシップとは大きく異なるので、「国内」を強調しています。)
大学生活4年間という限られた時間で就活への準備を効率良く有意義に行うために、表向きは就業体験でも、“実は裏向きで設定している真のインターンシップの目的”について業界別に見ていきましょう。
❖銀行・保険会社などの金融機関、消費者相手ではなく企業相手に取引を行う企業(B to B)
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「インターンシップ=業界に興味を持ってもらい、業界知識を積極的に得てもらう」
銀行を始めとする金融機関や、建設業など一般人ではなく企業を相手にビジネスを行う企業は幅広い専門知識を扱うことから、それらの専門分野について学んでいる学生など限られた範囲内からしか選考への応募が見込めないということが毎年見受けられています。そのような企業が学生から幅広く応募を呼びかけるためには業界への理解、そして専門知識の理解を深めてもらう動機となる“興味”を学生達に持ってもらいたいところ。金融機関・B to B企業のインターン募集を目にしたら、会計の関する知識や業界内でのシェア率、他企業との競争などに関する情報をあらかじめ調べて積極的に質問をしてみることで企業側も自分に対する興味を抱いてくれるかもしれないですね。
❖衣料品・家電・自動車などを製造する消費財メーカー
「インターンシップ=企業PR」
“消費財メーカー”という名の如く、企業にとって“消費者”という存在は絶対。人々がどのような質・価格でどのような製品を欲するのかを攻略するためには学生のリアルな意見を聞きたいところ。もちろん選考や、学生達がどのくらい企業の製品や業界内での位置づけ、他の企業にはない強みなどを調べ上げているかに関する評価を兼ねていることは間違いないですが、インターンシップに参加した学生達を通して学生間での企業製品の波及などを目論むメーカーも実際少なくはないです。そのような企業に対して志望者としてアピールするには、「その企業の特に推している製品や新製品などについて製造過程や特性について調べ上げ、研究結果から生まれた疑問について質問をする」ことが効果的かもしれないですね。
❖広告・マスコミ業界
「インターンシップ=優れた人材青田買い」
広告やマスコミ業界は市場が大きく、企業内でも配属先が多岐に渡るため募集人数が毎年多いのが特徴。そのため、同じようなタイプや能力を持った人材ばかりを取るよりは、100人採用するとしたら協調性だけを求めるのではなく、100通りのアプローチでタスクを遂行できるようにそれぞれ様々な分野や能力に特化している優秀な人材を選ぶ傾向にあります。枠が一見広いように見えますが、その中でも優秀な人材にインターンシップで出会いたいというのが企業側の目的であるので、広告・マスコミ業界に早い段階で狙いを定めている学生なら他の学生達に負けない“自分の長所”や“自己PR”を企業に興味深く聞いてもらえるようなアプローチ方法でインターン時にアピールしましょう。
❖幅広い商品を扱うサービス業の要、総合商社
「インターンシップ=企業に対する熱意があって優秀なら採用」
まず、インターンシップに参加をすることができたら第一段階クリアと言っても過言ではないほど、総合商社のインターンシップを単なる就業体験を捉えていたら出鼻を挫かれること間違いないと思います。総合商社のインターンシップに参加をするために必要な条件としてよくあるのがプレエントリーの申し込み、及びにエントリーシートの提出、すなわち、書類選考の通った人のみがインターンシップに参加することができるシステムであるため、実質選考が始まっていると考えられる。その参加者の中に優秀な人材候補がいれば参加者情報を人事部に回すことも珍しくはないことなので、早期内定を勝ち取ることも決して夢ではないと思います。
外資系企業
「インターンシップ=選考最終段階、参加者の素質を査定」
外資系企業のインターンシップも総合商社同様受け入れる人数が限られているため、インターンシップに参加をする権利が得られなければ選考さえも受けることができないと考えるべきです。インターンシップ参加に際して行われる書類選考や面接でアピールしていたことを果たしてどのくらいパフォーマンスに反映させることができるのかを厳しく査定されるため、良く見せたいあまりに自分の能力や兼ね備えている知識などを誇張してアピールしてしまうことは避けたいところ。インターンシップでの失敗1つが命取りであると捉え、与えられたタスクに真剣に取り組むことがマストですね。
IT系・ベンチャー企業
「インターンシップ=就業体験・トレーニング」
“就業体験”という本来の意味合いにわりと近い趣旨でインターンシップを実施することが多いのがIT系、及びにベンチャー企業。内容もまずは興味を持ってもらうための企業宣伝を兼ねた短期のものから、有給で雇い実務をこなしてもらうことで適した人材かを査定する長期のものがあります。やはり専門知識が多く、それらの多くは業務を通した方が得られやすいため、企業側からしても可能である限りは長期インターンシップを経た学生から積極的に正規雇用したいはず。成長率の高い業界であるため、興味があるなら大学に入学して余裕ができた段階ですぐに長期インターンシップに積極的に申し込んでみることをオススメします。
おわりに
いかがでしたでしょうか。あくまで業界のインターシップに関する全体像ですが、当てはまる企業は非常に多いと思います。年々“就業体験”というインターンシップの位置付けは業界・企業の種類に関係なく選考との結びつきが強くなっていることが窺えます。自分の中で明確な志望業界や志望企業が決まっているのであれば、インターンシップや会社説明会などそれらが持つ定義を意識し過ぎず、常に選考が絡んでいるということを意識して行動しましょう。業界の数だけインターンシップの趣旨も異なるということを念頭に、インターンシップ開催の情報は常に押さえておくことが大切です。また、冒頭でお伝えしたように海外インターンシップはこの内容とは大きく異なります。特に日本の金融業界や消費財メーカー業界のような企業のPRとしてインターンシップを実施している企業は極めて少なく、参加する学生側も多くのスキルや経験を積むことができると言われています。